ジェームスワットの蒸気機関
2014年の暮れ、あるサークルで会員が作成した作品の展示会があるとのことで作品の募集をしていました。
ジャンルはなんでも良いとのことでした。
ちょうどその頃、テレビで英国で起きた「産業革命」を題材にした番組をやっていました。 それを見た中で、
ジェームスワットは今までの効率の悪い蒸気機関に色々改良を重ね、そしてボールトン&ワット商会から蒸気
機関を通算約1000台を販売し、これにより工業の生産性を飛躍的高めることに貢献したとのことでした。
只、話はこれで終わりではなく、当時工場での労働のしかたについては未成熟であり、沢山の人たちが過酷な
長時間労働を強いられたとのことです。
イングランドの西武のリバプールは当時ロンドンより栄えた街で貿易港でした。この港から50Km離れた内陸
部にマンチェスターがあり、この街でワットの蒸気機関を使い紡績・機織りの工業が栄えたそうです。
ビートルズはリバプールで登場し、ハードデイズナイトという曲を作っています。これは当時の工場労働の状況を
歌っています。
And I've been working like a dog ・・・ 犬みたいに働いて
I should be sleeping like a log ・・・・ 丸太みたいに眠る
産業革命というと、ワットの蒸気機関により華々しく新しい工業が始まったように感じますが、これを受け入れる
ための様々な社会的変化をともなったようです。
以上の内容のテレビを見て、今から200年前の当時の風景が見えるようで、とても、懐かしいような気分に
なりました。
このため、今回の展示会へ出品する作品は「ジェームスワットの蒸気機関」を作ることにしました。
さて、作ることは決めましたが、作成当初は漠然としていて詳細が全くありませんでした。本当にできるのか自
信がありませんでした。
素材は何にするのかも決まらず、情報が余りにもなく設計図を書くなんてとんでもない状態でした。まずは、
一番重要で作成がとても難しいシリンダーとピストンの作成から手探りで行いました。今回はなるべくお金を
かけないことを条件にしていましたので、円筒形に近いペットボトル(100円)の円筒部を切り取ってテスト
をしました。そしてテストの結果は円筒形と言っても円筒の始まりと終わりの直径が微妙に異なることが判明
し、断念しました。この為、高価ではありますが精度の高いアクリルの円筒にしたところ可能になりました。
ピストンを動かす圧力として蒸気は危険なので、圧縮空気を使うことにしました。
シリンダーへの吸気と排気の弁の開閉はピストンの動いた力を利用する方法が一般的ですが、力が弱いと想
像し、弁の開閉は電気の力でピストンの位置によって開閉制御するようにしました。
なんとか、作り始めて3週間目に基本構造が出来、初めてテストしたところ、一発で動きました。これはとても
ラッキーでした。そもそも動かないと思っていましたので。
結局、詳細な設計図はなく、その都度のフリーハンドのイメージ図だけで完成にこぎつけました。
■ 作品 : ジェームスワットの蒸気機関の模型
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■ 作品展示時の説明文
江戸時代のころ、英国で1794年に商用のこのジェームスワットの蒸気機関が登場しました。
ピストンの直線運動を回転運動にしたことにより、以後様々な工業機械に利用されました。
この登場から約30年後、ジョージスティーブンソンの蒸気機関車がリバプール・マンチェスター間を走りました。
リバプール港に入荷した綿花を、この鉄道でマンチェスターへ運び生地に加工して、再び鉄道でリバプール
港へ送り海外へ輸出しました。
昔は工業といえば家内制手工業でしたが、ワットの蒸気機関の登場で、工場制機械工業が始まりました。
当時は1日15時間位働くような過酷な労働環境であり、20歳代で亡くなる人も多かったようです。
そして労働のしかたについて見直され、労働者の権利が認められるなど新しい概念が生まれました。
これらの付帯する変化も含めて「産業革命」は起こりました。
この模型はワットの蒸気機関の基本構造をまねたものです。 蒸気の変わりに圧縮空気で動きます。
■ 作品の構造の説明
正面から見たところです。
斜め上から見たところです。
真上から見たところです。
上からも、下からも、圧縮空気を入れてピストンを動かす構造です。
ピストンを下に動かすときの空気の流れです。
ピストンを上に動かすときの空気の流れです。
■ 作成の過程を見る
作成の過程をご覧になる方は、以下の絵をクリックしてください。